東京地方裁判所 昭和46年(ワ)7974号 判決
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〔判決理由〕一、被告会社が被告亀山の使用者であることは当事者間に争いがないところ、被告亀山本人および被告会社代表者韓樹豊の各尋問結果によると、加害車は被告亀山が購入し、主として被告会社への通勤用に使用していたもので、本件事故も被告会社への出勤途上に発生したことが認められるが、その他に、加害車を被告会社の業務用に使用したことがあるとか、被告亀山の加害車での通勤が被告会社の業務のために有益であり、被告会社が加害車での通勤に特別の便宜を与えていたとかの事実は認められない。
右証拠によると、被告会社は被告亀山に対し通勤費として月額一〇〇〇円を支給し、加害車を被告会社構内に駐車することを許容していたことが認められるが、前者は単に公共輸送機関利用のための費用に見合う程度の金額にすぎないし、後者も、二輪車の駐車のためには特別の場所や施設を要するわけではないから、これらはいずれも通勤利用に対する特別の便宜供与に当るものではない。
このように、車両が従業員の所有であつて、平素一般的に業務用に使用されることもなく、使用者が従業員の車両通勤によつて特段の利益を得あるいは車両通勤に対し特段の便宜を供与することもなく、従業員が専ら自己の通勤の便宜のために車両を利用しているにすぎない場合には、従業員の出勤途上の当該車両の運転行為をもつて使用者の事業の執行とみることはできないし、また、その運行に対し使用者が運行支配や運行利益を有するものということもできない。
よつて被告会社は、本件事故につき加害者の運行供用者に該当せず、また民法七一五条一項の使用者責任にも任じないものといわざるをえない。
二、<証拠>二、によれば、原告は本件事故当時夫実之助の手伝いを得て中華料理店「来楽」を経営し、自ら出前等の仕事に当ると共に、夫の経営する碑文谷運送有限会社の取締役に就任し、その手伝いをしていたことが認められるところ、前認定の入通院の状況に照らし、少なくとも入院中の二月余は右仕事ができず、また通院期間のうち昭和四五年八月七日まではその仕事がほとんどできない状況にあつたことが優に推認できる。
ところで原告は、<証拠>により認められる事故前年の昭和四三年申告収入額六一万九七五二円と事故年度の昭和四四年の申告収入額一八万五〇九三円との差額をもつて右休業損害の数額とみるべき旨主張するが、原告本人尋問の結果によつても、昭和四四年の収入が減少した理由の一つは、同年中に店舗を改装したため一月半ほど休業したこととその改装費の一部を経費として控除したことにあるものと窺われるから、右差額の全てを当然に原告受傷の結果とみるわけにはいかない。
しかしながら、前認定のとおり原告は事故前現に経済的価値ある労務に従事していたところ、受傷のためその稼働能力を失つたことは明らかなわけであるから、この稼働能力喪失を経済的に評価する必要がある。そこでその評価の基礎をどのように把握するかが問題であるが、前示申告所得額により、原告の昭和四三年の収入額が六一万九七五二円を下らないことが認められるが、一方<証拠>によれば原告は受傷の約一ケ月後に右中華料理店の経営を他人に委ね、その対価として月一〇万円の収入を得ているというのであるから、原告の稼働能力評価の基礎として右昭和四三年の収入額をそのまま採るわけにもいかない。しかし前認定の原告の稼働の質と量とに照らし、また昭和四四年賃金基本統計調査報告(労働大臣官房労働統計調査部編)に基づく女子労働者の平均賃金を参考にして考えると、原告の稼働能力評価額は少なくとも月額三万円を下らぬものと考えることができ、この限度で右喪失損害を把握するのが相当である。そして前認定の受傷の程度と入通院の程度に鑑み、その休業相当期間を一年間と認めるのが相当であるから、結局本件事故に基づく原告の治療期間中の稼働能力喪失損害は三六万円と算定すべきである。 (浜崎恭生)